Art by 米澤柊
2016年の「PRNG」を2025年仕様にリアレンジし、同一のメロディと歌詞、固定されたアレンジの下で「声のみ可変」という条件を公開する作品である。人間のボーカル、ボーカロイド、インストゥルメンタルという三つの提示は、暗号技術におけるPRNGとnonceの関係を参照しつつ、文化的連鎖を駆動する仕組みとして設計されている。不変のパラメータ(アレンジ/歌詞/旋律)に対して可変のパラメータ(声)を開示することで、初期の三つの試行が明示され、その先の試行は聴き手の側へ委ねられる。楽曲を学習したリスナーは自己の声や演奏の像を生成し、その想像上の再演がやがてカバーやリミックスとして外部化され、派生が連なっていく。唯一の正解を持たない音楽の領域において、この連鎖は終端を持たない探索として持続し、作品は文化的チェーンのジェネシスブロックとして機能する。三形態を連続して聴くとき、声の差異が解釈と情動の輪郭をどのように変化させるかが明瞭になり、聴取は参加へと移行する。固定と可変の関係を形式そのもので提示し、継承と改変の回路を起動するための、公開設計の音楽である。
リリース:2025.09.17
ジャンル: ポップ
キャラクター: 初音ミク